事業計画は主に数値計画とそれを実現するための行動計画から成ります。本日は変動損益計算の方法を用いた数値計画の作成方法について、述べたいと思います。
◆ヒトを大事に
経営資源の3大要素、ヒト・モノ・カネ、のなかでも、特に大事にしなければならないのはヒトです。中小企業でたびたび問題となるのは、仕事のノウハウが属人的であり、組織にはノウハウが蓄積していないということです。社員が退職すると、それがそのままノウハウの喪失につながるケースが多いです。ですので、人材を雇用し続けることができるかどうかは、企業の存続にかかわる問題です。そもそも、ヒトを大事にして経営している会社は、経営全般が上手く行っているケースが多いです。近年、「ヒトを大事にする経営」や「CSR経営」などが注目を浴びています。
◆人件費の計算
数値計画の作成は、固定費の大部分を占める人件費の計算から始めましょう。自社で雇うことのできる、または、雇うべき人員は何人なのか、何人のヒトを守ると決めるのかを、よく吟味しましょう。
◆その他固定費の計算
人件費が決まったら、その他の固定費(家賃、水道光熱費、減価償却費、その他売上の額の大小にかかわらず毎期一定の額かかる経費)を計算します。
◆目標利益の設定
次に、獲得したい利益の額を計算します。借入金の返済や設備投資にかかる費用をまかなうために、どのくらいの利益(税引前)が必要かを計算します。
◆変動費率を計算する
毎期、売上高に対して変動費(売上の額に比例して増減する経費、仕入、材料費や外注費、その他経費など)がどのくらい掛かっているか、その比率を求めます。過去の実績を集計して傾向を掴んだら、次期以降の変動費がどのようになるかを予測し、比率を決定します。材料価格や外注単価の変動等を織り込みます。
変動費率 = 変動費 / 売上高
◆必要売上高を計算する
固定費、目標利益、変動費率が計算できたら、売上高を計算します。目標利益を達成するための売上高は次の式で求められます。
必要売上高 = 固定費+目標利益 /(1-変動費率)
(1-変動費率)は限界利益率と言い換えられます。
ここで求められた売上高は、最初に決めた従業員の雇用を守るために必要な売上高です。従業員を守るための売上高と考えれば、売上目標達成へのモチベーションも違ってくると思います。会社の目的は、すべてのステークホルダー(利害関係者)が幸せになれるように経営を続けることですが、そのなかでも従業員の幸福を追求することは、会社に繁栄をもたらします。事業計画にも、その思いを込めましょう。